004210
すべては電話から
[投稿小説に戻る] [ワード検索] [作者用]

コンサートA 投稿日:2004/05/23(Sun) 17:03 No.25 
振り返ると、確かに清水だった。
横に男がいた・・・ははあ、あれが彼氏か・・・
ただ、正確に言うと、少し前を歩いていた。後ろから清水がついて行く、という感じ。話には聞いていたので、いろいろうるさい彼氏なんだろう、とは思っていたが、結婚していないから、亭主関白と言うのはおかしいが、そんな雰囲気をかもしだしていた。
ただ、彼の見た目のイメージは違った。身長が清水とほぼ変わらない。160前後くらいか。顔はどちらかといえば、丸顔の、可愛い感じだ。男に男が可愛いというのも変だが。
「よう」
「あ、斎藤君、河原君。来てるのは知ってたけど、会うとは思えへんかったなあ」
「そっちこそ、彼と二人で来てたんだ」
「そうそう」
「言うてくれたらよかったのに」河原も会話に入ってきた。
「そんなん、あの子、嫌がるし」
そりゃそうだろう。違う大学の人だし。
「おい、行くぞ」
彼が不機嫌そうに声をかけた。
「あ、ごめん、行くわ」
清水はそう言って、慌てて駆け出していった。

これまでのあらすじ 投稿日:2004/05/23(Sun) 23:43 No.26 
連載20回突破記念 これまでのあらすじです。今から全部読むのがおっくうな人、これを読んで、「はじ電」の続きを読もう!

斎藤聡は、19歳の大学1回生。高校時代の同級生で、東京の大学2回生の遠藤正二の後輩、辰巳直子と同じ大学に進むことになってから、彼女の存在が気になり始めた。

大学では、同じバトミントン部で、同じ理学部の河原ら体育会の野郎どもとつるむ仲間の紅一点、クラブに入っていない清水真知子に違う大学の彼氏が出来る。バイト仲間の田中明日香に報告し、幸せ一杯かと思いきや・・・。

辰巳直子の所属する吹奏楽部のコンサートのチケットをもらうために待ち合わせをした斎藤。思いがけず、告白をしてしまう。明確な返事はないものの、とてもいい雰囲気に。

コンサート会場で、清水とその彼氏と偶然出会う。不機嫌なのがありありとわかる彼氏に、気を使う清水。そして・・・

のっぽ嫁 > あのぉ。『すべては電話から』を略すと『すべ電』だと思うんだけど・・・・ (5/24-11:12) No.27
りえ > のっぽ奥様に1票(笑)なんで「はじ電」なの?気になるよ〜(^^; (5/24-23:49) No.29
のっぽさん > 気にしないで下さい。『すべ電』のまちがいです。訂正します。 (5/25-22:37) No.30
とっしゅ > すべ電って、スケベ電話の略みたいな感じがする・・・(^^; (5/25-23:57) No.32
のっぽさん > 誰か言うと思ってたんだよね〜。だから、『はじまりは電話から』にしようかと思ったんだけど、はじ電、って、恥電みたいで嫌だったんだよね。すべ電で、最後まで通します。応援よろしく。 (5/26-23:37) No.34

コンサートB 投稿日:2004/05/24(Mon) 23:01 No.28 
「なんや、あいつは。あいさつぐらいしたってええやろに」
同意を求めようと河原の方を見て言ったが、当の河原は、全然違う方向を見ていた。
「おい・・・」河原が言った。
「え?」
「辰巳さん、見たぞ・・・」
「ほんま?どこどこ?」
「そばに男がおったぞ・・・」
「え?どこにおる?!」
「あっちの方・・・」
河原の目線を追うが、遠くて、人が多くて、見つけることが出来なかった。河原もすぐに見失ったようだ。
「ほんまに直子ちゃんやったんか?」
「ああ」
誰なんだろう?胸騒ぎがした。もちろん、吹奏楽部の人とツーショットで歩く事ぐらい、あるだろう。全くの偶然、ということもありえる。
なのに、無性に胸騒ぎがする。
走って後を追いかけた。早く直子ちゃんを確認したい。横の男を確認したい。クラブの人なのか、つれなのか、それとも・・・

結局、見つけることは出来なかった。

それぞれの秋 投稿日:2004/05/25(Tue) 22:55 No.31 
コンサート以降、学部が違うこともあり、直子ちゃんとまともに会う機会がなかった。電話してデートに誘う気も起こらなかった。実際、後期の授業開始や学園祭で忙しくしていたのもあったが。
同じ忙しいといえば、直子ちゃんも同じようである。同じ大学なので、忙しい時期が同じなのは当たり前か。

遠藤も忙しいようである。東京で下宿している彼は、奨学金をもらってるとはいえ、クラブもせず、黙々とアルバイトで生活費を稼いでるようである。高校時代、漫研の部長をしている彼である。あまり人付き合いは得意ではない。飲みに行く機会も少なそうだし、彼女、いてるんやろか?

ある日、河原など、いつもの体育会の面々と、清水でカラオケに行くことになった。女一人、と思わせないから、つきあっていけるのだが。
「マッチー、いいよなあ」
いつのまにか、みんなからこう呼ばれていた。体育会のつれの一人、前田がそう言った。
「なんで?」
「だって、マッチー、女風呂に入るやろ?」
「当たり前やん」
「ということは、女の裸が見れるやん」
「あほか!」
一同、大爆笑である。そらそうだ。清水だって女である。
カラオケボックスに入って、まず清水が
「歌いたかって〜ん」
といいながら、宇多田を入れた。

 近づきたいよ〜 君のりそ〜うに〜

思いたっぷりに歌う姿を見て、清水の違う一面を見た気がした。それに気がついたのは俺だけだろうか。

告白 投稿日:2004/05/26(Wed) 00:08 No.33 
「会われへんか?」
東京の遠藤からの電話だった。もう季節は冬に近づいていた。でも、年末の帰省には早すぎる。
断る理由もなく、むしろ、高校時代からの友人で、会いたい人間だったので、約束をして、電話を切った。

JR鶴橋駅で待ち合わせをして、風月というお好み焼き屋に入った。高校時代から、大阪環状線を途中下車して、入った店である。キャベツの甘味が後を引くお好み焼きに、たまご麺のそばを入れたモダンがたまらない。

「お前に報告しようと思って・・・」
「なんやねん」
「実は、彼女が出来てな・・・」
ビックリした。高校時代、お互いもてたためしがなかった。その遠藤に、彼女が・・・
「よかったなぁ」
「で、これから会うねん」
「だから、大阪に戻って来たんか?」
意外であった。東京で出来た彼女だと思っていた。遠藤はうなづいた。
「俺の知ってる人?」

「直子ちゃんや」


告白A 投稿日:2004/05/27(Thu) 00:02 No.35 
言葉がなかった。遠藤に彼女が出来たのはいい。よかったと思う。でも、よりによって、なんで直子ちゃんやねん・・・・・

「いつから付き合ってるねん」
「付き合いだしたばっかりや」
「お前から言うたんか」
「そうや」
「いつ言うてん」
「直子ちゃんのクラブのコンサートがあったやろ。その日や」
予感が的中した。あの時のそばにいた男は、遠藤やったんや。そうか、あの時に大阪に戻って来て、直子ちゃんに告白したんや。そう思うと、すさまじい嫉妬と怒りが込み上げてきた。
「お前・・・俺が直子ちゃん好きなん知ってて・・・」
「・・・ああ・・・・・」
「だから、あの時、勘違いやって言うて、迷わそうとしたんちゃうんか!」
「俺は高校の時から好きやったんや!」
「じゃ、なんでそれを俺に言わへんねん!」

気まずい沈黙が続く。

告白B 投稿日:2004/05/28(Fri) 00:00 No.36 
「漫画部に入ってきた時から、好きやったんや。でも、告白してしまったら、先輩・後輩としての関係が壊れてしまうかもしれん。それはようせんかった・・・」
「じゃ、なんで今ごろ告白してん」
再び、沈黙が続く。
「俺が、あんなこと言ったからか?」
うなずきはしなかった。でも、うなずいたも同然だ。目がそう語っていた。

忙しい店内で、お好みの生地がやっと届いた。ここは、店員が焼くスタイルだ。目の前で、アルバイトらしき女の店員が、がしゃがしゃと生地を混ぜる。そのしぐさが見事で、見ている間、気が紛れた。

焼きあがったモダン焼きを黙々と食べた。いつもは旨いモダン焼きも、今日ばかりは、味がしなかった・・・といえば、小説みたいだが、いつもと同じように、ちゃんと味がして、旨かった。

食べ終わって、水の入ったコップを手に取った。ドラマみたいに水をかけてやろうか、という気になった。だが、どこかに理性がはたらいたのだろう。そんなことをしてもしゃあない、ともう一人の自分がささやいた。

店で別れて、それぞれ、お互いの家に向かって、違う電車に乗った。同じ方向でなかったのが、救いだった。

1年目の冬 投稿日:2004/05/29(Sat) 21:44 No.37 
冬本番の季節になった。バドミントンは屋内スポーツなので、季節はあまり関係がない。しいて言えば、リーグ戦が春秋の2回なので、春に向けて、地道に練習する季節である。

あいかわらず体育会の面々でキャンパス生活を送っていた。変化・・・といえば、河原に彼女が出来た事だ。同じバドミントンの同回生だ。直子ちゃんを見ていた俺にとって、同期の女子バドはあまり興味がなかった。仲間として仲良くはしていたが、恋愛対象として見ていなかった。見たとして、誰かと付き合ったとして、もし別れでもしたら、後のクラブ活動に支障が出そうで、俺には考えられなかった。でもまあ、河原君。同期の彼女と仲良くやってくれ。バスケ部の前田と2人ではやし立ててやる。

清水は相変わらず彼氏のところへせっせと料理や掃除をしに行っていた。クリスマスイブも、2人で過ごすらしい。勝手にしてくれ。

直子ちゃんも、遠藤のところへ・・・と思いきや、このクリスマスは会わないそうだ。遠藤がバイトで忙しい、ということと、金に余裕がないかららしい。遠距離恋愛の辛いところだ。釣った魚にえさをやらないタイプなのか?大切にしないと、直子ちゃんに振られるぞ。でも、俺はもう、直子ちゃんに走ることはないだろう。あきらめたのか?と言われれば、100%、と言い切れないのも正直なところだが、遠藤は高校の先輩後輩からのつながりで、ずっと足かけ3年半も思い続けていたんだから、二人はそういう運命だったんだろうな、と最近は思えるようになった。

こうして、新しい年を迎えたのである。


年が明けて 投稿日:2004/05/30(Sun) 21:20 No.39 
クリスマスも初詣も、誰にも会わずに、寂しい年末年始を過ごした。自宅生の僕は家族と一緒に年を越したわけで、いつもと変わらぬ年となった。

「飲みに行かへん?」
電話口でこう言ったのは、清水だった。珍しいな、と思った。と同時に、またけんかしたな、と直感した。

「今度はええかげん腹たってなぁ〜」
清水がぼやいていた。
「あいつの彼女はこうしてくれた、とか言われてもな〜」
そらまあ、腹もたつやろう。
ひとしきり愚痴を聞いた後、清水がぽつりと言った。
「きっと、結婚はせえへんやろなあ」
「そんなこと思たん?」
「うん。一生もんやないなぁ」
そんなことを言う清水に、根本的なことを聞いてみた。
「じゃ、別れるん?」
「いや、好きやから、別れへんけど」
「でも、付き合ったカップルの行き着く先は、結婚か、別れるか、どっちかやろ?」
清水は考え込んでしまった。

年が明けてA 投稿日:2004/05/31(Mon) 00:05 No.40 
「私はな・・・あんたとは一生付き合っていけると思うねん」
「ほう?」
「私は、そういう見る眼に自信はあるねん」
「男のみる目はないのに?」
「そうそう、ほっとけ!」
清水の乗り突っ込みに、大笑いしてしまった。
清水の言いたい事は、わかる気がする。清水の様子を見てたら、学部の他の女の子としゃべるよりも、本音で、楽しそうにしゃべっている。また、しゃべってる中で、ああ、そうそう、その考えよくわかる、という事が多い。
「ああ、そういや、二人で飲みに行ったやろ?」
「道端で割引券もらった、梅田の?」
「そうそう。あれ、後で彼氏に怒られてな〜」
「それやったら、今飲んでてええの?!」
「かまへんねん」
「そうかぁ・・・」
自分が彼氏の立場なら、どう思うだろう。まあ、あまりいい気はしないだろう。でも、むきになって怒るのも違うような気がした。嫉妬する気持ちはわからなくはないが、やきもちをやきたくもない。
ほろ酔い加減で居酒屋を出た。勘定はもちろん割り勘だ。

[直接移動] [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]


- PetitBoard -