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ダブル
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天地を繋ぐ者 投稿日:2005/11/16(Wed) 18:03 No.19 
 学校の教室で朝のホームルーム。
 ソラの席は空っぽで、窓の向こうは雪が降っていた。
 リクの言葉を思い出す。
「全部終わらせてやるよ。そしたら解放してやる」
 わたしは二人共好きだった。
 ずっとずっと。
 でも去年の冬の出来事で、みんなおかしな方向に走りだした。
 どうしてこんなにもうまくいかないのかな。
 気持ちを言葉にするのがとても難しくて、大切な人が離れて行く。
「二つに分かれて生まれたりなんかしなけりゃ、こんなことにはならなかったのにな」
 そう言ったリクの目は泣きそうだった。
 急に胸が苦しくなって来て、嫌な予感がする。
 わたし、行かなきゃ………。
 二人を止めなくちゃ―――。
 気が付くと、呆然とするクラスメイトを視界の端に追いやるように、教室を飛び出していた。

幻と真実 投稿日:2005/11/16(Wed) 22:41 No.21 
 雪の積量は昨日より増し、廃墟の屋上は足首まで沈むほどだった。
 だが景色は悪くない。
 朝陽が雲に透け、すべてが雪色に溶けた世界。
 そこに探していた人物はいた。
「懐かしいだろ?」
「リク………」
 夜に感じていた雪への嫌悪と恐怖は、もうなくなっていた。
 リクが生きていることの確信と怒りで消えたんだろう。
 だが、そんなことはどうでもよかった。
「あのビデオに映っていた部屋で、ここだと分かった」
「昔は三人で、よくここに来ていたもんな」
 髪は風にもてあそばれて、カラダが軽くなったように錯覚する。
「どうしてこんなこと―――」
「お前はいつだって正しかった」
 尋ねる言葉が遮られる。
「なにもかもが優秀で、人からも好かれていた」
 いや、もう答えているのかもしれない。
「オレの欲しいものは全部持って行ったもんな」
「………」
「でも渡さないぜ。お前が本当に欲しかったものは―――」
 それまで感情を見せないように話していたのがウソのように、リクの目付きが鋭くなった。
「なによりも、誰よりもお前が欲しかった女は……ミズキはオレだけのものだ」
 だが、なにかにおびえているようにも見えた。
「だから殺したんだろ?」
 …………殺した?
「なにを………言ってるんだ?」
「まだ気づかないのか?」
 理解の出来ない言葉に疑問を投げると、怪訝な顔をした。
「去年の冬、双子の片割れが死んだ」
「またわけのわからないことを―――」
「死んだんだよ」
「じゃあなんだよリク、お前は幽霊だとでも言いたいのか?」
 諭すように言うリクに、ひどくイラつく。
 なんだ?
 どういうことなんだよ?!
「死んだのはお前だよ」
「……………俺を馬鹿にしたいだけか?」
「今のは正確じゃないな……」
「じゃあなんなんだよ!」
 頭が上手く回らなくて、感情が声を発した。
「死んだのはソラで、俺なんだよ………リク」
 頭がおかしくなりそうだった。
「ソラは俺だぞ………」
「もう俺のフリなんかしなくていいんだよ、リク」
「うるさい! 俺がソラだ!」
「これ以上ミズキを困らせるな」
 掴み掛かろうと雪を踏み締めると、別の声が聞こえた。
「行かないで!」
 その声のした先には、学校に行っているはずのミズキが息を切らせて立っていた。
「リク、もう自分を責めないで」
「ミズキ?」
「リクは優しかったから、自分を殺しちゃったんだよ………」
「ミズキまでなに言ってるんだ?」
 困惑の恐怖に身を震わせると、ミズキがそっと俺の両頬に手を伸ばしてまた答えた。
「自分を殺して、ソラになったんだよ」
「ソラ……に…」
「わたし、知ってたよ………リクの中にソラがいたこと」
 じっと見つめるミズキが、ぼろぼろと泣き出す。
 なにかを恐れて出来なかった告白。
 とうとうしてしまった。
 そんな表情だった。
 視線を戻すと、すぐそこにいたはずのもう一人のオレは消えていて、雪に足跡がないことに気づいて、やっと理解する。
 さっきまでいた双子の片割れは、幻だったことを―――。
 そして思い出した。
 あの時のことを―――。
 ロングコースに入った後のこと。
 突風に煽られてバランスを崩したオレは、ひどい傾斜を転げ落ちた。
 運良く崖手前の枯れ木に引っ掛かって一命を取り留めたが、そんなオレに手を伸ばしたソラが、逆に崖ぶちにぶら下がったんだ。
「ごめん……ごめんよ、ソラ……」
 ミズキの温もりを感じながら、今やっと言えるのがそんな言葉で、ミズキはそんなオレと一緒に泣いてくれた。
 雪を降らせていた雲はいつのまにか水の粒を撒いていて、なぜか救われるような思いがした。

あとがき 投稿日:2005/11/16(Wed) 23:11 No.23 
 読んでいただいた方、お疲れ様でした。^^
 ファンタジーはダメなんだ……
 からはじまった急創りのリベンジ作品でしたが、
 思いのほか大変でした。
 連載を続けている方はすごいですね。

 今回は特に突発的にはじめたもので
 とってもお粗末なプロットでした。

 天と地を結ぶ水の橋。
 雲となり雨となり、世界を繋ぐ。

 不意に浮かんだ制作イメージがこんなのです。
 だから名前は
「天=空=ソラ」
「地=陸=リク」
「水=水季=ミズキ」
 となりました。
 基本的に名前とかこんな程度の理由です。
 そこから発展したのが、名前にちなんだ設定です。
「リクは雪の日に埋もれた存在」
「ミズキは雪を溶かす雨であり、ソラとリクを繋ぐ存在」
「ホントは天に召されちゃってたソラ」
 あとは適当で「独占欲、包容力、困惑、愛情、嫉妬」をコネコネ混ぜての出たとこ勝負という感じで……。
 読者はこう感じるだろうから二転三転させて、推測が立たないようにしちゃおう。
 物語りの終わりはハッピーエンドで、キャラクターイメージを逆転して好感を持てるようにしちゃおうとか、そんなことにだけ意識を向けました。
 計画性のなさに笑うしかないというか……。
 楽しんでいただけたら幸いです。

 ちなみにダブルというのはドッペルゲンガーのことです^^
 ドッペルゲンガーはドイツ語で、ダブルは英語ですね。
 人格分裂症と、人物の入れ替わりということで
 双子の設定が確定してしまったのでタイトルにしました。

 感想いただけるとうれしいです^^

ひーちゃん > ドッペルゲンガーで検索したら、映画が出て来た。役所広司が主演で面白そうじゃ^^
私、こういうお話も好きなんよ〜〜^^
これじゃあ、感想にならないね〜〜^^;
(11/20-08:35)
No.24
りえ > 楽しく読ませてもらいました(^^)
名前にもこう言う意味があったんですね。次回作も待ってます♪ (11/21-22:56)
No.25

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